あたたかな雨
第二章 / 恩返し
誰かから話し掛けられるなんて、本当に久しぶりだった。
陸奥義彦くん。
とても優しくて、正義感の強そうな男の子だったな。
家に入ると、薄暗い部屋だけが私を迎えてくれる。
ぼやぼやした電気だけをつけると、彼から借りた傘と一緒に洗面所に向かった。
私には、友達と言えるような存在はいない。
たまに話すひとつ上の先輩はいるけど、友達なんて言ったら先輩に失礼だと思った。
傘を水で洗い流す。
水滴をタオルで拭いてから、近くの物干しに立て掛けた。