桜が咲く季節も。


鏡で入念にチェックした、制服。
似合ってるのかな。なんて、不安に思う。
入学式って、不安ばっかりね。

階段を降りてリビングに向かう。

「おはよう、美桜。今日は早いわね」

大好きなお母さんの声、大好きな紅茶の香り。
あたしの好きな、サクラティー。

自分でも変なくらい、桜が好き。
欲しいものも、好きなものも、宝物も、全部、桜。
そこまで桜に、心を奪われたのはなぜかな?

「ねぇ、お母さん。あたしってなんで、桜が好きなんだろ?」

お母さんは首をかしげた。やっぱり、わからないよね…。
思い出でもあるのかな。桜に……。

気分転換で紅茶を飲む。口の中に広がる、桜の香り。
「おいしい!」
やっぱり、桜の紅茶が好き。


ねぇ、宏くん?
あなたは言っていたよね。桜はあたしみたいだと…、
でもね、違うみたいだよ。
だって、あたしは桜のように、美しくもかわいくてもなれないもの。

そう伝えたら、「かわいいから」って言ってあたしをちょっとだけ怒るかな?
それとも、「かわいい」と言ってあたしを、抱き寄せるのかな?

あたしだったら、どっちも望むよ。
あなたからの言葉なら、全て嬉しいよ…。


「美桜、そんなにマイペースだと遅れるよ」

曖昧な返事をして、バックを用意する。
入学式ほど緊張する行事なんて、あんまりないよ。
心臓がはちきれそう…。






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