桜が咲く季節も。


「お母さん、そろそろ行くね」

何度もチェックした服装。
でも、やっぱり不安でお母さんに聞いたりもした。
お母さんは、「だから、大丈夫だって」って言って呆れた顔をした。

「いってらっしゃい。頑張ってね」

「うん。いってきます!」

さわやかな風が吹き抜ける。太陽が眩しいよ。
でも、綺麗。今日の日に、ぴったりよ。
あたしが目を奪われたのは、照りつける太陽に負けずに輝く桜だった。

風が吹くたび桜の花は散っていく。
1枚、1枚が美しい桜を強調させる。
偶然にもあたしの手の平に落ちた、桜。
これを、宝物にしてもいい?なんて聞いてみる。

花びらを手帳に挟む。これは、小さい頃からのおまじない。
「桜の花びらを持っていると、幸運が訪れる」
嘘か、本当か、そんなことどうでも、いいの。
持っていられるだけで、幸せ。


駅に着く頃には人が、溢れかえっていた。
制服を着た人達もたくさんいる。

あたしが入学する桜丘高校は、電車で30分。
近くもなく、遠くもなく、ちょうどいいの。

「美桜~!!」
後ろから聞こえる聞き覚えのある声。
振り向くとそこには大好きな親友の姿。

「おはよう、美咲。」
小川美咲。小さい頃からずっと一緒にいた一番信頼している友達。
「おはよう!」
あたしが一番嬉しいのは、美咲と同じ高校に行けたこと。

「美桜、メール見た?」
メール?バッグから取り出した携帯のディスプレイには、
新着メールが1件。
と書いてあった。
すぐにメールを開く。

〈おはよ!あとで美桜の家行くからね。〉

と書かれている。
「ごめん!携帯見てなかった」
朝は、携帯は見ないって言ってるのに。



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