桜が咲く季節も。
大好きな桜の木が広がる、体育館裏。
そこで、あたしは輝く存在を見つけた。
桜の木を眺めていると、ある男の子に視線を奪われた。
茶色の明るい髪、大きくぱっちりとした目、高い背。
全てが彼を、強調させた。
どくん…どくんと、心臓が高鳴る。
なに、この気持ち……。初めて感じた、感情。
あたしは、あなたに恋をしていた。
一目惚れはありえない、そうどこかで思っていた。
そんな考えが一瞬にして、変わった。
不意に大きな風が吹く。
桜の花が、一瞬にして散っていく。
そのとき、あなたと視線が重なったの。
重なった気がした…。
気のせい、なのかな…?
たくさんの人が、あなたを見つめる。
あなたは、だれ……?
たくさんの人の心を奪い、あなたはどこかに行ってしまった。
「また…会えるかな…」
かすかな期待が、心にうまれた。
「かっこよかったね」
美咲が言う。本当に、かっこよかった…。
また会えるかな…、会えるよね?
あのとき…あなたの心には、だれが映っていたのかな?―、