溺愛キング
いきなり矢耶が泣き出した。

俺もびっくりしたけど周りは相当びっくりしたみたいだ。

おろおろしだしている。


『やっ矢耶――…』
「矢耶ちゃん」


矢耶が泣くとどーしたらいいか分かんなくなる。

いつもの俺でいれなくなる。


矢耶は今だ泣き続けたまま俺にしがみついている。

泣いた理由が俺にあるのは分かってる。

矢耶の言ったことは正しい。

俺、何やってんだよ。

矢耶を泣かしてどーすんだよ。

こんなに俺のこと考えてる矢耶。

どうしようもない気持ちが込み上げてくる。


勢いよく小さい矢耶を抱きしめ返した。

壊れてしまう程強く抱きしめた。



『矢耶、矢耶、悪かった。
俺が悪かったな。辛い思いさせて悪かった。
矢耶の言う通りだ。こんなんじゃ総長失格だな。謝って済むことじゃないけど、泣き止んでくれよ。なっ?』


ずっと泣き続ける矢耶。


『頼むから。矢耶、泣き止んでくれ。なぁ―…矢耶。』

引っ付いていた矢耶を離して顔を覗き込む。

目を赤くして大きい瞳からたくさんの涙が溢れ出ている。

そんな顔を見ると胸が痛い。

こんなに俺らのことを想う矢耶が愛しくて仕方ない。


「ひっく………………
もう喧嘩しないでね。」


矢耶の涙をすくうと矢耶が俺に言ってきた。


『しない。やらねぇ。もう矢耶が泣くのは堪えらんねぇ。』
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