溺愛キング
「それ聞いて泣いてたのか?」

『うん。藍に捨てられるって思ったら止まらなくて…』

「ばかだな。なに、一人で突っ走ってんだよ。俺のこと信用ねぇの?」

『ううん、そうじゃない。矢耶に自信がないから…』

「矢耶…ったく、可愛いなぁ。ほんとに。ますます手放したくねぇ。この前の家出といい、このままだったら家から一歩も出させねぇぞ」

『えっ!』

「俺の身にもなれ。心臓が何個あってもたんねぇ」


藍はぎゅっと抱きしめてくれた。

藍から伝わってくる体温が暖かい。


『けど、ほんと良かったぁ』


藍の胸板に頬をスリ寄せる。


「俺も一安心だ」


藍に顎を上げられる。


『たった半日一緒に居なかっただけで、ずーっと離れたみたい。藍は今日、どこに居てたの?』

「俺は保健室で面子と喋ってた。矢耶について」

『えっ?矢耶?』

「矢耶から出された禁止令をどうやって解くか」

『ふふ』

「あとは、矢耶の可愛さについてみんなで喋ってた。そんなもんかな」

『矢耶のことばっか』

「当たり前だろ」

『なのに、あんな態度だったの?』

「俺も追い詰められてたんだ」


藍からキスの雨が降ってくる。


『んっ………次、あんな態度とったら怒るよ?』

「あぁ、もうしねぇって」

『じゃぁ、もういいや!藍のこともっと知れたし!』


藍にお姫様抱っこされて、布団まで運んでもらった。
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