気まぐれ短編集
翼くんは、中学3年生の男の子だ。
あたしより2歳下で、今年は受験をひかえている。
物ごころつくかつかないかの頃にピアノを始めたあたしが、気付いたときにはもう翼くんもピアノを習い始めていた。
二こ下だけど、いつも翼くんのピアノは綺麗であたしの憧れだった。
もちろん、今も。
あたしにはない感性を以て奏でられる曲、旋律、ハーモニーはあたしが真似しようと思っても、全然出来ないんだ。
それに、弾いているときの翼くんは、何でいうか…
ーー天使のようで。
生粋の日本人には違いないんだけど、白い肌とか、色素の薄いサラサラの髪とか、くっきりした目鼻立ちとか。
そんなのも込みで、弾いているときは『ピアノの神様』に愛された天使のようなんだ。
いつのまにか、好きだった。
たとえば、自分の母国を「日本だ」と自覚するするような感じで。
『好き』なのがあたりまえって感じ。