気まぐれ短編集
「やっぱり夜遅くまで勉強してるの?」
あたしの問いかけを翼くんはケラケラ笑い飛ばした。
「んなわけないじゃーん。俺もう志望校はとっくに合格圏内なんだし。」
「え、志望校ってどこ?」
あたしが思わずしゃがんで訊くと、翼くんは驚いたような顔をして顔を紅潮させた。
あ、大胆だったかな。
「…万里ちゃんの学校。」
上目遣いであたしを見てぼそっと言う翼くんにあたしの心臓は暴れた。
「ほんと!?わー!いいよー、うちの学校は!」
嬉しくて飛び上がる気持ちだった。
「…先生の用事、忘れてない?」
「…あ。」
翼くんに気をとられてすっかり忘れていた。
翼くんは何も言わずにスッと立ち上がってキッチンに行った。
…何だか呆れられた…?
目的がないのにカーペットに座り込んでて、すごく自分が馬鹿馬鹿しくて虚しい。
やだ、翼くん。
呆れないで。