気まぐれ短編集
あたしの演奏が始まると、俄かにみんなのおしゃべりが静かになった。
緊張が高まるけど、心地良いものだ。
あくまでレストランとかのバックミュージックのつもりで弾くけど、やっぱりみんなに聴いてほしいから酔うように奏でる。
『White Christmas』はゆったりとした曲調で終始演奏される。
アレンジは難しいけど短くされているからすぐに終わった。
ほうっという感嘆の声と共に拍手が送られた。
あたしは小さく会釈すると、次の『きよしこのよる』を弾き始めた。
『きよしこのよる』は当初、ギターを伴奏として歌える讃美歌として作られたそうだ。
そのジャズ風というのも、よく聴いたことのある感じとはまた違っていて良い感じの曲調だった。
最後の一音の余韻が消えると、あたしは立ち上がった。
すると、みんながぱあっと笑って拍手をした。
「すごいねえ、万里ちゃん!!」
「かっこいい!!」
小学生のちびっ子たちからでも、褒められて素直に嬉しい。
「ありがとう。」
あたしはみんなに微笑むとピアノ椅子から離れてみんなのとこへ戻った。
「綺麗だった。」
翼くんが壁に背中を預けて拍手しながら笑った。