気まぐれ短編集
『ずるい』って…。
いつもの翼くんの、計算なしに笑ってあたしの心を射抜くことのほうがずるいよ。
「…俺が高校を合格したら、言おうと思ってたのに。あんなピアノ聴かされたあとに言うとか…かっこよすぎるし。」
「え」
くるりと振り向いた翼くんの顔は、今まで見たことないくらい紅かった。
さらさらの髪の向こうの瞳があたしを捉える。
「俺も、ずっーと前から。万里ちゃんが好きだよ。」
翼くんは、そっと手をあたしに伸ばして
頬に触れて
背中に両腕をまわして
あたしを抱き寄せた。
二こ下なんて、信じられない。