気まぐれ短編集
3:みずいろとみかんいろの時間

【みずいろときいろの時間】



□□



「せんぱい、先に帰ってて構いませんよ。」


バトンを部室倉庫にしまいながら美羽(みわ)が言った。


長く結われた彼女のポニーテールが陽を浴びて輝かしい茶色に染まっている。



「わたしちょっと教室に忘れ物しちゃって。」


あどけなくエヘヘと笑う。


「…待つ。」



俺が一言言って、倉庫の鍵を掛ける。


すると、彼女はふるふると首を横に振って笑った。


「すぐ、…あ、たぶん同じ電車に乗れるくらいには追いつきますから。」



美羽がこういう笑い方をした時は、もう一歩も譲らないということはとうに知っていた。



俺は渋々といった感じでなんとか頷いた。


「無理して急ぐなよ。」



俺は美羽の目を見て念を押すように言った。


「分かってますよ。」



美羽はちょっといじけたように口を尖らせて言う。




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