気まぐれ短編集
それから俺たちは本当に“友達”から始めた。
その日は一緒に帰ることになり、たくさん、けれど口下手な俺と緊張しまくりの彼女は少しずつ、お互いのことを話し合った。
出身中学校、趣味、好きなもの、きらいなもの、進路のこと…。
それで分かったことは、彼女はしっかり『自分』をもっていて強く優しい子だということだった。
こんなにいい子が俺のことを好きだと言ってくれるなんて嬉しいけど、半ば信じられない。
俺は大して勉強ができるわけでもなく、運動が得意なわけでもなく、器量がいいわけでもない。
ただの高校生。周りにとけ込んでしまうような平凡な。
正直、俺より『良いヤツ』は俺の友達にも何人かいると思っていた。
そんな後ろ向きな気持ちは告白されたこの日から静かにつもり始めていった。