気まぐれ短編集
《いっかいめ》
“寒くない?”
白々しく照れながら言うあんたは、手ぇ繋ぎたいっち思っとるのまるわかりやったんよ。
ーじゃあ、手ぇ繋いでみますか。
そうあたしがちょっと笑ったら、初めて重ねてきたあんたの手は、するりと自然にあたしの指と指の間に絡まってきて。
びっくりした、……けど
そっか、これが『こいびと』なんやな、って思った。
あたしの手は、四歳から続けていたピアノのおかげで他の女の子よりは少し大きかったはずなんやけど、
あんたの手に重ねられたあたしの手は、すごくちっちゃく見えた。
ちょっと、悔しかった。