気まぐれ短編集
《にかいめ》
“寒くない?”
やっぱりそう言うあんたは照れながらで。
あたしは、『アホやなー』って笑って
はいはい、って言ってあたしからあんたの手をとった。
指先は、あたしもあんたも冷たくて
代わりばんこでお互いの指先を包み合ったよね。
ー夏になってもその口実で手ぇ繋ぐん?
そう聞いたら
“『何か手が手持ち無沙汰やない?』っていうのはどう?”
ってニヤッて笑うあんたは、やっぱりバカやしアホやんって思った。
けど、何か、あたしの無い胸があったかかった。