気まぐれ短編集


《にかいめ》



“寒くない?”



やっぱりそう言うあんたは照れながらで。



あたしは、『アホやなー』って笑って


はいはい、って言ってあたしからあんたの手をとった。



指先は、あたしもあんたも冷たくて

代わりばんこでお互いの指先を包み合ったよね。





ー夏になってもその口実で手ぇ繋ぐん?


そう聞いたら


“『何か手が手持ち無沙汰やない?』っていうのはどう?”


ってニヤッて笑うあんたは、やっぱりバカやしアホやんって思った。



けど、何か、あたしの無い胸があったかかった。



















< 54 / 59 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop