気まぐれ短編集
《渇いた土のような心》
触れたい。触れたい。
すぐ近くにあるあんたの手。
言えばすぐに手を繋いでくれることは分かっとる。
あんたも、たぶん繋ぎたいって思っとることも。
やけど、ちょっとしたことがその衝動に歯止めをかける。
『こんなに甘えて呆れられんかな』
最終的に、この底なしの渇望に負けて言ってしまうんやけど、
手を繋いでも、やっぱり何か『もっと』って思っとる自分がおらんこともない。
すぐに注がれるあんたの優しさも、あたしの心は渇いた土のようにすぐに吸いとって、
ーもっと…。
渇いた土が潤うことは、来るんかな。