気まぐれ短編集

《渇いた土のような心》



触れたい。触れたい。


すぐ近くにあるあんたの手。



言えばすぐに手を繋いでくれることは分かっとる。


あんたも、たぶん繋ぎたいって思っとることも。




やけど、ちょっとしたことがその衝動に歯止めをかける。


『こんなに甘えて呆れられんかな』



最終的に、この底なしの渇望に負けて言ってしまうんやけど、


手を繋いでも、やっぱり何か『もっと』って思っとる自分がおらんこともない。



すぐに注がれるあんたの優しさも、あたしの心は渇いた土のようにすぐに吸いとって、





ーもっと…。





渇いた土が潤うことは、来るんかな。








< 57 / 59 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop