気まぐれ短編集
《人口貼るカイロ》
食べることが至福であるあたしが、
今日のお弁当の味を憶えていない。
すごいことやと思う。真剣に。
明らかに、あんたが原因。
何かネジが外れたようにツンに対するデレの割合が上回ってきて。
あたしから、お誘いして。
ぼんやりとした憧れやった姿勢をとって
食べながらやったんやけど
食べることに集中なんか出来るわけなくて。
あたしの背中から肩にかけての、あんた温もり。
言いようのない、安心感。
けど、あたしの心臓は忙しく働いとって。
今日はずっと
背中が貼るカイロ貼ったように
あたしの背中はあったかいんやろうな。