water color
「椎名……。」

美里が、一歩引いた。
ごめん。
心配してくれてるのに。

「美里……慎二、もういないんだよ……?」

涙があふれてきた。
あれ、見送るまで泣かないって思ってたのにな。

前が見えないよ…。
あの、舌っ足らずで呼ぶ‘椎名’って声も。
大きくてあったかい背中も。
恥ずかしそうにつないでくれた右手も。


もう、全部なくなってしまった。


「嫌ぁっ…もう一回、呼んでよ…っ!」

慎二の馬鹿。
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