白神





「………よし、こうしよう!」



沈黙を破ったのは彼のほう。



「1日だけ、自殺の日を延ばそう。そうしたら、僕も邪魔しないから。その代わり、今日1日僕に付き合ってくれない?」



は?



「何言ってんの?」



思わず拍子抜けした私。



「さ、そうと決まれば………。」



フワッと、体が浮かんだ。



「わっ。」



気付いたら橋の上。



あんな貧弱で細ッこい体の何処に、人一人持ち上げる力があるんだ。



「ゲームセンターに行こうっ!!」



彼は無邪気に笑って言った。



ぐんぐん私の腕を引っ張る。



「はぁ!?ちょっと、私はまだ………。」



やっぱり貧弱そうでも、男だからか、私は腕が振り払えなかった。



気づきもしなかった。



さっきの言葉が、あんたを傷つけてたなんて。



それを知ったのは、ずっと後のことだけど。




< 10 / 19 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop