白神
「………どうして。」
突然立ち止まり、彼の握った手に、キュっと力が入った。
ぼそりと呟いたような声は、こんな騒音でいっぱいのこのゲームセンターでも、私の耳に嫌というほどハッキリ届いて。
震えている声に、私は戸惑いを隠せなかった。
どうして、って。私のほうが 訊きたい。
どうして、私に構うのか。
どうして、あんたがそんなに悲しそうに笑うのか。
どうして、あんたが苦しそうな顔をするのか。
少なくとも、私の周りには そんな人居なかった。
彼のような人は今までに居なかったから。
どうしていいかワカラナイ。
どう接すればいいのかワカラナイ。
只、わかることは
彼に握られた手が、異様に熱くて。
何だか鼻の奥がツンとして
胸の辺りが痛くて
それでも何だか温かかった。
それだけ。