地味子の初恋
瑠稀の後ろを無言で歩く。
目の前には、大嫌いな男の背中。
無造作にセットされた真っ赤な髪が、歩く度に揺れている。
すると、瑠稀は足を止め後ろを振り返った。
「おまえ、昨日なんで帰ったんだよ」
「っ!」
だんだん距離を縮められ、あたしの背中は電柱柱にぶつかった。
昨日のことを思い出し、何も言えなかった。
あたしがどんだけ傷ついたと思ってるの。
そんなこと言えなくて、息を飲むしかなかった。
「…まあ、安心しろよ。俺がごまかしてやったから」
「……」
何が安心しろよ。あんたがいるかぎり安心できるはずない。
「俺を置いていった罰として、今日からおまえは俺の奴隷だ」
一瞬、耳を疑った。
この男は何を言ってるんだろうって。
「ちょっと、待ってよ。約束なんてしてないし、奴隷ってなに」
戸惑いを隠しきれない。
「せっかく再会した幼馴染に挨拶すんのは当然だろ」
鼻で小さく笑った。
そう、あたしたちは幼馴染だ。
そして、いじめっ子といじめられっ子。