地味子の初恋
小さい頃から、家が近所なせいかいつも一緒だった。
引っ込み思案で、冴えないあたしと
綺麗な顔立ちで、意地悪で乱暴な幼馴染。
昔から、あたしは瑠稀のいいなりだった。
泣かされたことなんて、数知れない。
だけど、年を重ねるごとに酷くなっていった。
パシリとして扱われた。
そんなあたしは笑われ者だ、反論することもできなかった。
瑠稀は学校で中心的な存在で、そんな瑠稀に意見する人などいなかった。
あたしを助けてくれる人なんて、誰1人いなかった。
苦しかった。
瑠稀が飽きるのを待った。
だけど、それは中学卒業するまで終わらなかった。
瑠稀から逃げたくて、あたしは誰にも知られないように隣町の学校を受験した。
瑠稀は地元の高校に進学したから、登下校の時も会うことはなかった。
なのに、なのに…
「それなのに、おまえは挨拶もなしかよ。地味で冴えない幼馴染を可愛がってやっただろ」
小馬鹿にするように、あたしを見下ろした。
可愛がってなんていない。
あたしを苛めて、楽しんでただけのくせに。
「…だからって、なんであたしが…」
あたしのか細い声を聞いて、小さな笑みを消した。
無表情であたしを見入る。
そして、また口角を釣り上げて笑う。
「地味子、おまえに拒否権はないんだよ。黙って俺に従え」
冷たい視線を向けられた。
声も1トーン低かった。