地味子の初恋
「ねえ、奴隷さん。ジュース買ってきてよ」
にっこり笑うだけど、馬鹿にしたように笑ってる三沢さん。
「え……」
「だって、あんた奴隷なんでしょー?ジュース買ってきなさいよ」
「…っ」
「ちょっと!三沢、あんたいい加減に…」
「うるさいわね、あたしはこの奴隷女に言ってんのよ!」
あたしは何がしたいの…。
嫌なのに、ジュース買ってくる気なんてないのに何も言えない…。
こんな自分が大嫌いだ…。
膝に乗せた拳をぎゅっと、握って俯いた。
「…おい」
そこに、いつからいたのか瑠稀の声が頭の上から降ってきた。
「こいつは、俺の奴隷だけど…。いつからおまえの奴隷になったわけ?」
「え…!」
瑠稀の言葉に三沢さんは目を丸くしていた。
「俺に許可なく、こいつを使うんじゃねえよ」
「え…相模君…」
「おい、地味子行くぞ」
「え…」
瑠稀は、三沢さんには目もくれず戸惑うあたしを睨みつけた。
「わ、わかった…」
「栞…?」
すっと、立ちあがったあたしを心配そうに見る葉南。
「ごめん、葉南。春斗君と二人で食べてて」
そう言って、既に歩き始めている瑠稀を追いかけた。
そんな、あたしの背中を睨んでいる三沢さんに気づくはずもなかった。