地味子の初恋
下校時間になり、帰り支度を始める。
「ねえ、栞!今日クレープ食べに行かない?春斗と三人でさ!」
「わ!クレープ?行きた…「地味子、帰るぞ」
あたしが言い終わる前に、瑠稀があたしの言葉を遮った。
「え…一緒に帰るの?」
思わず、出てしまった言葉。
瑠稀はそれを聞いて眉をひそめて、眉間に皺を寄せギロッとあたしを睨みつけた。
「なんだよ、文句あんのかよ」
「ちょっと!相模、栞はあたしたちとクレープ食べに行くのよ!!」
「そんなの、おまえたちで仲良く行けばいーだろ。なんで栞が行く必要あんだよ」
瑠稀は、そう吐き捨てるとあたしの腕を力強く引っ張って立ちあがらせた。
「いっ、痛い…」
「ちょっと、相模…あんた」
葉南は止めようとしてくれるけど、止める隙もないまま瑠稀によって廊下へと引きずられた。
「い、痛いよ…瑠稀…」
瑠稀はあたしの声なんて気にもとめないで、どんどん足を進めた。
痛みで涙目になってきた。
玄関に差し掛かると、やっと手を離してくれた。
「おまえ、奴隷のくせに口答えすんじゃねえよ」
そう言い放つと、瑠稀は靴に履き替え始めた。
手首を見ると赤くなっていた。
「何?言いたいことあんの?」
そんなあたしを、瑠稀は見下ろしていた。
あたしは、顔を左右に振ることしかできなかった。
「……」
瑠稀は何も言わなかった。
あたしは、怖くて意味もなく立ち尽くしていた。
瑠稀は大きな溜息を吐いた。
「早くしてくんない?俺、おまえと違って暇じゃねえんだよ」
「ご、ごめん…」
慌てて靴を履き、瑠稀の後を追った。