地味子の初恋
帰りも行きと同じように、駅まで歩く。
「おまえ、俺の奴隷になったんだから今までみたいに友達と帰れると思うなよ」
「え…」
「俺からの呼び出しは、約束があろうとも断れ」
「え…でも」
約束の方が最優先なのに。
「でも…なに?」
冷たい視線を向けられた。
「おまえ、カップルと一緒に遊ぶとかどんだけ空気読めないワケ?だから、おまえ今まで友達いなかったんだよ。まあ、おまえに友達できただけ進歩したけど」
「っ…!」
葉南と春斗君の言葉に甘えていたのは、あたしが弱いからなのかな。
だけど、古傷を抉るようなこと言われたくなかった。
もう、思い出したくもないことなのに…。
瑠稀にいじめられることより辛かったのかもしれない。
あの時の孤独さを知っているから、甘えてしまった。
でも、そんなこと瑠稀に言えるわけなかった。
瑠稀は、これ以上喋ることはなかった。
無言電車に乗り込み、無言で電車に揺られる。
駅に着くと、瑠稀は家とは逆方向に歩き出した。
えっと…用あるのかな。
あたしは、帰っちゃっていいのかな。
1人自問自答する。
「おい、何ノロノロしてんだよ。グズは嫌いだ、早くしろ」
…あたしも行くんだ。
落胆しつつ、大人しくついていく。
少し歩けば、ある高校が見えてきた。
瑠稀が通ってた北高だ…。
ちらほら、ヤンキーがいて怖い…。
瑠稀が足を止めた。
そこには、クレープの屋台があった。
「クレープ食べるの…?」
「勘違いすんじゃねえぞ、アイツらが話してたから食いたくなっただけだ!!!」
勘違いって、なにをだろう…。
「う、うん…」
とりあえず、頷いた。