地味子の初恋
瑠稀はメニューを見て、品定めしている。
瑠稀、甘いもの平気なんだ。
「おい、何食う?いちごでいいよな」
「う、うん」
答える暇もなく、決められてしまった。
なら、聞かなきゃいいのに…。
「おっさん、いちごとチョコバナナな」
「はいよ」
愛想よく振る舞うおじさんに、千円札を渡した。
慌てて、財布を取り出す。
「いらねえよ。地味子が相手だろうが、女から金もらう気はない。分かったら、これ持って座ってろ」
そう言い、鞄を渡された。
「え…」
「荷物持ちも奴隷の仕事だ」
奴隷…。
その言葉が突き刺さった。
さっきは、ちょっと嬉しかったのにな。
馬鹿みたい。男の人に奢ってもらうのって、初めてだから勘違いしてしまった。
あたしは、ただの奴隷なのに…。
黙って、二つの鞄を持ちベンチに座る。
「ねえ、見てアレ…」
ふと、声のする方を見る。
「荷物持ちじゃない…?なに、パシリ?うけるー」
クスクスと笑う声。
慌てて、頭を下げた。意味もなく、アスファルトを見つめる。
声が遠ざかるまで、頭を上げることができなかった。
あたしっだって、こんなことしたいわけじゃないのに…!
瑠稀の奴隷の間、あたしは見ず知らずの人に笑われる日が続くの…?