地味子の初恋
顔を上げて、瑠稀はすぐ来てあたしの隣にドカッと座った。
「ん」
クレープを差し出された。
「あ、ありがとう…」
パクっと、口に含んだ。
口の中に、いちごの甘酸っぱさとクリームの甘みが広がった…。
おいしい…。
あっという間に食べきってしまった。
「あ!瑠稀じゃ~ん」
あたしたちの前で足を止めた1人のヤンキー。
北高の制服を着てるので、瑠稀の友達だろう。
金髪の髪を立たせていて、制服もだらしなく着こなしていた。
「おいおい、おまえ女の趣味変わったなー。こんな真面目そうな子つかまえて」
ヤンキーは、瑠稀をからかうように笑った。
「ばっ、馬鹿言うんじゃねえよ!地味子を相手にするやつなんて、いるわけねえだろ!こいつは、ただの奴隷だ」
「地味子?って…」
ヤンキーは、あたしをまじまじと見る。
どうしたらいいか分からなくなり、視線が泳ぐ。
「ああ、そうだよ」
瑠稀が、ぶっきらぼうに呟いた。
「あの地味子ちゃんかよ~。俺のこと覚えてない?長瀬 颯!」
長瀬 颯…。
そう言えば、見覚えのある顔だ。
この長瀬君とは、中学が一緒だった瑠稀の友達の1人だった。
長瀬君は、あたしのこと瑠稀以外では唯一地味子と呼ぶ。
瑠稀があたしのことをパシリにしてる時は、おもしろがってるけど馬鹿にしたりはしなかった。
だけど、中学の時の同級生になんて会いたくなかったな。