地味子の初恋
「でも、地味子ちゃんとまた学校一緒なんて君ら仲いいねー」
長瀬君はケラケラ笑ってる。
「…好きでいるんじゃねえよ。誰がこんな女と好き好んでいるかよ」
瑠稀は不機嫌そうに、あたしから顔を背けた。
別に、あたしだって瑠稀のこと嫌いだけどそういう態度は傷つく。
あたしって、ほんとに瑠稀に嫌われてるんだなって痛感する。
「…気分悪ぃ。地味子帰るぞ」
瑠稀は急に立ち上がった。
「え…」
「同じこと二度も言わす気じゃ、ねーだろうな」
瑠稀の冷たい視線に、慌てて立ち上がった。
「相変わらず、気分屋だねえ…」
長瀬君は、おかしそうに笑った。
「うっせー」
長瀬君に言葉を吐き捨てる瑠稀の後を、慌てて追った。
瑠稀の鞄を抱えて。
さっきも思ったけど、瑠稀の鞄はすごく軽い。
教科書とか入ってないのかな…。
瑠稀が足を止めたと思ったら、いつの間にか瑠稀の家の前に差し掛かってた。
「いい加減、返してくんない?」
「え…」
何のことか分からず、戸惑ってしまう。
「鞄。それとも、おまえが持ち帰って毎朝持ってくるか?」
「ご、ごめんっ」
慌てて、鞄を返した。
「……」
瑠稀は、別れの一言を言うわけでもなく家の中に入って行った。
1人、取り残された。
今日は、何だったんだろう。
どっと、疲れた。
帰ろう。
斜め向かいにある、自分の家まで歩いた。