地味子の初恋
そこには、あたしを抱えた瑠稀の姿。
いつの間に、歩いてきたのか。
「ちょっと、何?なんで瑠稀君が?」
「ね、なによアレ」
鋭い女子の視線が突き刺さる。
「先生、俺保健室連れてくから」
「おお、頼んだぞ。こら静かにしなさい」
瑠稀は、一歩足を踏み出す。
「あの…大丈夫だから、降ろして」
二度と口なんて聞きたくなかったけど、小さな声えお振り絞る。
きっと、瑠稀にしか聞こえてないだろう。
すると、今度は瑠稀の鋭い視線がぶつかる。
「うるせえ、黙ってろよ」
「っ…!」
瑠稀の一言で、口を噤んでしまった。
少し切れ長の瑠稀の瞳と目が合うだけで、昔は怖かった。
それは今でも変わらないんだ。
その瞳で、瑠稀はあたしを黙らす。
昔のように、またあたしは俯いた。
瑠稀はあたしを抱え、スタスタと歩く。
保健室どこか分かるんだろうか、と思ったけれどまた睨まれるのが怖いから口に出すのは止めた。
特に迷うこともなく、保健室に辿り着いた。
瑠稀は乱暴にドアを開ける。
「あら、どうしたの」
保健室に入ると、瑠稀はあたしを下ろし自分は椅子にドカッと座った。
「あの…胃が痛くて」
「そう、薬あげるからえらかったらベッド使いなさいね」
保険医から、薬と水が入ったコップを受け取る。
「そうそう、先生これから用あるからよろしくね」
すると、すぐさま保険医は保健室から出て行ってしまった。