地味子の初恋


「ほら!アンタが近づこうったって、無駄なんだよ」

クスクスと笑われながら、言われた。

瑠稀も、一緒になって笑ってた。

いたくなかった、いたくなかった。

授業が始まることさえ、気にもせず走った。

瑠稀や三沢さんたちの前から消えたくて…。

「やだ、泣いちゃうんじゃない?」

そう言いつつも、楽しそうに言う三沢さんの声。

「そんなの、知るかよ」

瑠稀の声。

視界に、瑠稀がニヤっと笑うのが見えた。

泣きだしてしまいたかった。

消えたかった。

途中で、葉南とすれ違った。

「え!栞?ちょっと、どこ行くの?」

振り向くことも、何か言うことだって出来なかった。

渡しそこなった、屋上の鍵を持って再び屋上まで走った。


乱暴に、屋上のドアを閉めた。

崩れるように、膝をついた。

「っ…!うっ…」

涙が出てきた。

あの、楽しむような瑠稀の顔。

三沢さんたちの嘲笑うような笑い声。

嫌だ、嫌だ。


あたしは、平凡に暮らしたいだけなのに…。

なんで瑠稀は乱すの。

昔もそうだった。

わざと、みんなの前であたしを馬鹿にして男子からは笑われ女子からは妬まれた。

それを知ってて、瑠稀は同じことを繰り返すんだ。



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