地味子の初恋
初めて着た男の人のジャケットは、すごく大きくてブカブカで
さっきまで瑠稀が着てたから、温かかった。
「さっさとしろ…」
ずっと、座ったままだったあたしを見て冷たい視線を向ける。
だけど、不思議とこの時だけは怖くなかった。
急いで立ち上がり、瑠稀との距離を詰めた。
校舎には、こんな時間だからか誰もいなくて
あたしと瑠稀の二人だけのようだ。
こんなびしょびしょな姿を見られなくて済むなと、少し安心した。
窓からは、オレンジ色の夕日が差し込んでいてとても綺麗だ。
冷えた体を少し温めてくれた。
濡れた服も、髪も、体も乾かしてくれたらいいのにと思った。