地味子の初恋
夕日が暖かいとは言えど、まだ春先。
濡れたシャツは体に染みる。
電車に乗れば暖かいし、少しはマシかなって思ってた。
だけど、あたしの数歩前を歩く瑠唏は駅を通り過ぎる。
「……」
あたしの足は止まる。
いつも帰りは電車だ。
乗らなくても帰れるんだけど。
でも、どうしよう…。
瑠唏は歩いて帰るのかな。
声をかければいいだけなのに、あたしの声は出てこない。
黙って、電車で帰ると怒るかな。
考えてると、瑠唏が振り返る。
「おい、何してんだよ」
チッと舌打ちをした。
「あの…電車…」
「電車が何だよ…はっきり言え」
狼狽えるあたしに、瑠唏はイライラしたように促す。
「だ、だから…電車で帰らないのかなって」
瑠唏の冷たい視線に、ビクつきながら言葉を落とした。