地味子の初恋
「っ!」

漆黒の瞳に捕まって、肩を震わす。

こうやって、この男は周りからはもてはやされる綺麗な顔で
あたしを黙らす。

簡単に捕えるんだ。

会わなかった日々なんて、関係ないみたいに昔と同じ顔で。

そして、あたしの手首を掴んだ。

あたしは、瑠稀の視線から逃げるように俯いた。

すると、瑠稀があたしの手首を掴む力を強めた。

「いっ、たいっ…」

「こっち向けよ」

「い、嫌だ…」

怖くて、瑠稀の顔なんて見れなくて。

「こっち向けって!!」

瑠稀の少し苛立った声に驚き、顔を上げる。

そこには、瑠稀の苛立った表情があった。

「おまえって、本当に昔からムカつくやつ…」

すると、瑠稀はあたしの手首を勢いよく引っ張って
すぐに、唇に何か感じた。

あたしは、理解するのにどれくらいかかっただろう。

それは、紛れもなく瑠稀の唇で。

瑠稀は、あたしにキスをした。

どうして…

初めてだったのに。

じっと瑠稀を見る。

「なんだよ、そのシケたツラは。もしかして、初めてとか言っちゃう?」

馬鹿にしたように、鼻で笑った。


< 5 / 46 >

この作品をシェア

pagetop