トナリの無口くん
あたしは必死に走った。
今、あたしにはなにも見えていない。
ただ、走っているだけ。
あたしは今までにないくらい本気で走っている。
たかがトラック半周のことなのに、本気になっている。
でも、いいんだ。
それが気持ちいい。
気がつけば、あたしは四人抜かしていた。
あたしすごいじゃん!!!
でも、本気で走りすぎたかな…………
なんか、どの人が野口がわかんな………
「高原ぁーっ!!!!!」
…………え???
野口………????
あたしは声のした方に走った。
「野口っ!!!!」
バトンを渡した時の野口の表情は、どんな時の野口よりも真剣だった。