case of mistaken identity
第2譚 集いの呼び鈴
「ふーっ」


夕方、エアリーの歌声が響く屋敷内を通り、俺、良寛 霄(ヤヤモト ソラ)とリリーは無事自室にたどり着いた。

俺が部屋の襖を閉め、頼まれた食品とは別に買ってきた材料を隠し扉の下に隠して戻って来たのを見届けると、エアリーは歌うのをやめ笑いかける。


「おかえりなさい。霄ちゃん、リリー様」


『神隠しの物語』。
エアリーがよく使用する曲。
設定した対象を除く歌を聴いている全ての者の意識から、対象の存在を極力最低限まで下げる効果がある。
俺の秘密の買い物がばれないのはこの歌のおかげだ。





もうすぐ完全に日が暮れる。
一日の中で1番強い朱色の光が部屋に差し込む。


親父達に頼まれた物が入った買い物袋を持って階下に下りる。





(…やけに静かだな…)



ピーンと言う、耳鳴りすらしない。


……?






「耳鳴りがしない?」
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