case of mistaken identity


    ドカッ!!




重い手応えと共に一塊が飛び、湿っぽい音を立てて落ちる。
その音を意識のどこかで確認しつつも他の塊に踵落としをくらわせる。



ゴムが混ざったような、しかし明らかに人の肉の感触であることに意識を閉じ踏み潰す。





しばらくして、動かなくなったそれらを、俺はまとめて蹴り飛ばした。



一息ついていると、後ろから意外そうな声が聞こえてきた。







「驚いた。人形を作るだけが能じゃないのね」
「霄ちゃんお疲れ様〜」




「……………どうも」





縁側の所に立つリリーとエアリーに振り返る。

リリーは動かなくなった肉塊を一瞥するとすっとそっちに腕を向けた。




「もう還りなさいな」




パチンッ




彼女が指を鳴らすと夕方の通り、空間が弾ける感覚とともに世界が戻って来た。













パチ、パチ、




「!?」

「これはこれは、頼もしい2代目ですね」



振り返った先に、手を叩く痩身の男。
しっとりとした黒髪の下の恐ろしく整った顔、そこに浮かべる穏やかな笑み。
そして時代錯誤な執事の着る燕尾服にもよく似たスーツ。


俺は、自分の目を疑った。
しかし、絶対に間違えるはずがなかった。



「あんた……人形…なのか?」
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