case of mistaken identity
「なるほど、あなたは非常に"耐性"の強い人間のようですね」
「耐性?」
紫の瞳はにこりと微笑む。
エアリーが後ろから補足する。
「神隠しに対する耐性、精神が揺らぎにくいってことよ」
ふと、周りの状況に意識が向いた。
世界は戻ったはずなのに、音が、ない。
「………?」
不思議に思っていると、マスターが先程とは少し調子を変えて話し出した。
「そうそう、初代は生前我々ドールの他にも作っているものがございましてね」
「?」
その意味深な含みのある声に、俺は周りに再び沸き始めた肉塊を感じながら聞く。
目の前に立つ壮麗な人形は口元を音もなく弓なりに広げ、言った。
「さて、あなたには使いこなす程の中身があるか…」
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