case of mistaken identity
ダカダカダカダカダダダダダダダダッッ!!……







「………」
「もう行ったよ。霄ちゃん」

行きずりに倒れ込んだ俺の頭上から降って来たコロコロとした軽やかな声に俺はうめき声と共に顔を上げた。

「サンキュー…エアリー」

それに応じてにこりと微笑んだのは瑠璃色の大きな瞳に足元まであるストレートのブロンド。
そして俺の膝までの体を飾る瞳と同じ色のドレス。

俺が生まれて初めて作った西洋人形、エアリー。




『良寛屋』の創始者であり初代のひいじいちゃんには、不思議な力があった。


人形を作り、その人形の魂も作る力。



やがてひいじいちゃんの作った人形達は、戦争で大半が壊れ、その魂だけが路頭に迷う事となった。


人形の魂に、死はない。
その魂が気に入るような体、もとい『ケース』を作り、なおかつその魂の名前を作り手が呼んだ時、その魂は人形の中に収まるらしい。


そしてこの力は次の代だったじいちゃんにも親父にも継がれる事なく、俺の中でいきなり開花した。





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