case of mistaken identity
マスターが振り返らずにリリーに「設定を」と言うと、リリーのよく通る声がこだました。









「私、"リリー"の認識において"神隠し"を"異常"と設定。
"異常"を削除」






「…何言ってんだ?」

「マスターがスキルを使う場合はマスター以外からの認識の照らし合わせが必要になるの。次からは霄ちゃんがリリー様のしてる事をするのよ?」

「なんで俺が…」


「本当はそうあるべきなのよ?
今は霄ちゃんわからないしリリー様ならなんとか出来るだけの力があるからやってるけど…」





そんな会話をエアリーとかわしているうちに、マスターの前の空間にどこからかきらきらと光を反射する5本の弦のようなものが浮かびあがっていた。


それに、マスターの長い指がかかり、上から下へ弾かれる。





ポロロロロン…







1本だけ変な音の弦があった。
その弦を、マスターが掴む。




「"異常"を削除します」


















それに答えるように掴まれた弦が光に包まれると、周りの肉塊達も光に包まれ、やがて弦の消滅にしたがって霧散した。





光が散ったあとの空間に、"日常"の物音が戻ってくる。
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