case of mistaken identity
「あーあ。もうこりゃ駄目だな」

カラ…と、手の中を開く。
そこには親父の奇襲から護り切れなかった壊れた人形の残骸。
親父は、人形が完成してしまえば東洋だろうが西洋だろうが壊したり処分したりはしない。

だから作っている最中に壊しにかかる。


「残念ね…魂が入る前じゃあ…私の"歌"も届かないし…」

残念そうに言うエアリーに苦笑だけで返す。

魂を持った人形には"スキル"が宿る。
ひいじいちゃんの時は単なる特技のようだったものも時代を経て俺の作った"ケース"に入った途端それは"スキル"として強化されているらしい。


エアリーのスキル名は"歌姫"。
察せられる通り、歌を用いて影響を及ぼす力。

癒しの歌を歌えば傷が癒え、攻撃の歌を歌えば相手を傷付ける事が出来る。
ただし、魂の宿っているものに限られるが。


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