case of mistaken identity
塗装を施してから、体と間接同士を、特殊なゴムで繋げる。
顔は特に慎重に、ふっくらとした色に唇や瞼を塗っていく。


そして、眼。


特に良い人形を作れそうになった時の為に取り寄せた瞳の部分にルビーをあてがった眼。

ルビーの赤は"揺らがない"。

どんな色の光りを当てても赤く光るようになっているらしい。


俺はそれをしっかり人形の瞼の裏に固定し、丁寧にウェーブをかけた艶やかな黒髪をその頭に付けた。



「霄ちゃん、お洋服、持って来たよ」
「おう、サンキュ」

ボディが完成し、あとは着飾るだけだ。




下着を着せ、ドレスを着せ、ブーツの紐を結ぶ。



今まで作ったどの人形よりも美しい出来だった。
凛とした表情、ふくよかな作り、我ながら申し分ない。
残っているのは、人形技師としての最後の仕上げ。


名前だ。


俺の力は自作の人形に名前を付けて初めて発動する。
名前を付けなければ魂は宿らない。


その中でひいじいちゃんの生み出した人形の魂が俺の作ったケースを気に入り、かつ俺がその魂と同じ名前をケースに付けた時、その魂が人形に入る事が出来ると言うわけだ。


今まで俺が作ったドールの中で、ひいじいちゃんの"娘"たる人形達の魂が宿ったのはエアリーだけ。

自分の直感に従って名前を作るとは言え、出来ればエアリーが寂しくないようにしてやりたかった。




頼むぞー…

我がインスピレーション…!
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