ノンフィクションアリス
須賀礼司は中学のクラスメイトだった。


明るくてサッカーが上手くて成績まで良かった。
顔立ちも端正でなにより爽やかだったので、勿論女子にも人気があった。
地味で特技もない僕は彼を羨ましく思っていた。


中2の文化祭で劇をやる事になった。
ジャンケンに負け半ば押し付けられるように役が回ってきた。

「藤沢、演技うまいな」
「え」

須賀が話しかけてくれた。嬉しくて楽しかった。
「俳優とかなれそうだよな」
いつも自信に満ちた須賀に言われるとこっちまでその気になった。

そういうオーラがあった。
須賀の父親は有名な建築デザイナーで、新しい住宅地でも目立つでかい家に住んでいた。

一度だけ遊びに行った時、美人な母親と年の離れた妹に会った。


「お兄ちゃんのお友達?」「そうだよ。美雨、挨拶は?」
「こんにちは」


幸福そうで一点の曇りもなかった。そんなシュガーが羨ましかった。


優秀な兄に比べられて家でも学校でも地味で、いてもいなくてもいいような自分が嫌いだった。

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