それでも君が好き
「いただきます。」

感謝の気持ちをこめて食す。きちんと手を合わせて、一瞬だけ目を閉じる。

「おいしいよ、翔太郎君。」

「ありがとう。そう言ってもらえると作り甲斐があるよ。」

翔太郎は澪に優しく微笑む。翔太郎の笑顔に少し照れる。その笑顔を目に焼き付ける。ずっと見ていたいと。

「本当にうまそうに食べるから、俺まで幸せになってくるよ。」

そんな台詞ですら愛おしい。それに優しくてやわらかな笑顔だ。澪の「愛しい」気持ちにするりと入る。

「翔太郎君が作るのは本当に美味しいんだもん。」

澪は幸せな表情を浮かべる。翔太郎は澪のその表情がたまらない。嬉しくなる。

「ごちそうさまでした。」

「おそまつさまでした。」

感謝の気持ちをこめ、また目を閉じて、合掌をする。その仕草もまた愛おしい。

朝食を食べ終え、食器を洗い片付ける。翔太郎は澪を手招きをする。左手の手の甲を相手に向け、人差し指を上に向ける。手前にクイッと小さく引く。所謂、アメリカ流手招きである。

「おいで。」

ダイニングテーブルへと促す。椅子を引いて澪を座らせる。高級レストランに行けば、ウエイターが座らせてくれる様に。
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