華〜ハナ〜Ⅰ【完結】
城
嘉の運転する車は、気がつくと大きな建物の前に止まった。
「みんな降りてね。」
顔は見えないけど嘉が満足そうに言った。
なにこれ………
車を降りた私の目の前に現れたのは
まさに“城”
真っ白な外壁に
たくさんの窓がついている。
あれが全部部屋だとしたら…
軽く50部屋くらいあるんじゃない?
てことは桜華のメンバー全員の部屋があるってことになる…
それくらい広い。
暴走族ってお金持ちなんだ。
率直にそう思った。
「侑希っ!行こうぜっ!」
俄然テンションが高くなってる楓は
キラキラした笑顔を振り撒いている。
それでも動かず“城”を見ていた私に
「どうかしたか?」
蓮士が声をかけてきた。
「いいえ…。何もないんだけど…。
ここ、すごく大きいのね。」
私はやっぱり“城”から目を離せないまま、そう答えた。
すると蓮士はふっと笑って、「行くぞ」と言って歩きだした。
私はやっと目を離し、歩いていく蓮士の背を追った。