華〜ハナ〜Ⅰ【完結】
ふと風の声に耳を澄ます。
『…―外に……出てない……――』
「そう………」
私の心を覆うのはいつもマスターのこと。
風がマスターの存在を感知してないということはあの場所から出てないということか…。
彼は今、何を思っているのだろう
カケラでも私のことを思ってくれるのだろうか……
いくら同じ時間を過ごしても私は彼を理解出来ない……
そもそも、こんな私が理解しようとすることがおかしいのだけれど……
でも……
ほら、こんなにも切なくなる。
マスターの事を思わない時間なんてない。
会えない訳でもないのに
どうしようもなく悲しい。
私が喜怒哀楽の感情を出すのはやっぱりマスターにだけ…か………。
「私は…どうしたいのだろう………」
私のそんな疑問は暗い空に消えた。