華〜ハナ〜Ⅰ【完結】
私は通話ボタンを押し、耳元に近づけた。
「……はい…………」
<あ、侑希ちゃん?起きてた?>
「ええ。さっき起きたわ。」
<そっか。あのね、話があるんだけど…>
またか。
今度は一体何なんだろう。
<できたら、“城”に来てほしいんだ。
あっでも遠いかな?
あっ……蓮………>
電話の向こう側で、嘉が驚いたような声をあげた。
蓮士……?
<よぉ。>
低い、心地好い声が聞こえてくる。
「おはよう、蓮士。」
<ああ…>
「どうしたの?話って何?」
学校じゃダメなんだろうか。
<今から迎えに行く。家で待ってろ。>
……は?
「家分かるの?」
そうだ。
来たことないのに私の家が分かるんだろうか。
<俺のケータイにGPSがついてる>
ああ、なるほどね。
「分かった。家で待ってればいいのね?」
私は学校に行く気も起きなかったから、“城”に行くことを承諾した。