華〜ハナ〜Ⅰ【完結】
「悪ぃ遅くなった」
蓮士は申し訳なさそうにそう言った。
私がふるふると首を振ると、フッと笑ってヘルメットを取り出した。
「ほらよ。さっさと乗れ。」
ヘルメットを私に渡すと、蓮士はバイクに乗るように促す。
私は渡されたそれをすっぽり被り、蓮士の後ろにヒラリと乗った。
「慣れてんな。乗ったことあんのか?」
「ないけど。」
蓮士の表情は見えないけど、驚いていると思う。
私は身軽だからこれくらい簡単だ。
蓮士は「しっかり捕まれ」と言って私の腕をとり、自分の腰に巻き付かせた。
そしてそのままバイクを発進させた。
マンションの前にいた女達は、びっくりしたように口を開いたまま一言も喋らなかった。