華〜ハナ〜Ⅰ【完結】
蓮士のバイクがあるところまで来ると、私はゆっくりと地面に下ろされた。
グラウンドはやっぱり騒がしい。
「ほら。メット被れ。」
そう言う蓮士はこの前は被らせはしなかったヘルメットを私に被せる。
真っ黒の、蓮士の香がするヘルメット。
「蓮士、被らないの?」
「ああ。」
蓮士はそう短く答えると、私を抱き上げてバイクの後ろに乗せた。
そして自分も大きなバイクに跨がると、私の腕をとり腰に巻き付かせた。
「離すなよ?」
前を向いているから顔は見えない。
だけど少し、優しい声色だった。
バイクがゆっくりと発進すると、柔らかい風が私たちを包んだ。
バイクは、正門とは逆の方向へ走る。
でるところがあるんだろうか、と思っていると、ちゃんと門があった。
そこから出ると、私をのせたバイクは私をどこかへ運んだ。