華〜ハナ〜Ⅰ【完結】
オレンジに包まれた空気は優しい。
いつも感じる風も、蓮士の後ろにいると違うように思われる。
決してゆっくりとは言えない速度で進むバイクだけれど、切られた風は柔らかかった。
やっぱり着いた先は“城”
朝よりも人が増えていて、より一層その大きさを主張している。
私の斜め前を歩く蓮士には尊敬と憧れのこもった挨拶が向けられる。
私にはやっぱり困惑と好奇の視線。
そんな視線を知ってか知らずか、蓮士は私の隣に並ぶようにあるき始めた。
エレベーターに乗って着いた先も、いつもと同じ3階。
だけどあの部屋とは反対方向に蓮士は歩き出した。