華〜ハナ〜Ⅰ【完結】
ピンポーン
アパートの、一つの部屋のボタンを押す。
ここに来て、楓の震えは尋常じゃなかった。
エリカと繋いでいるその手にはギュッと力が入っている。
「………誰だ?」
低めの、疲れた女の声がした。
それを聞いて楓の震えはますますひどくなる。
「道成というものです。今日は少々お話がありまして。
もしよろしかったら上げていただけませんか?」
エリカの、柔らかく話す声が女に向けられた。
「なんだい?話って……」
ガチャッいう音とともに開いたドアからは、楓が恐れている女の顔がのぞいた。