華〜ハナ〜Ⅰ【完結】
バタンッ
乱暴に玄関のドアが閉まる音。
そのおとに楓はビクッと肩を揺らした。
「…で?話ってなんだい?」
楓の母親はエリカ達が座るのも待たずに切り出す。
「楓のことについてなんですけど。」
エリカも、強くそれに答えた。
ギュ…と楓はエリカの手を掴んだ。
「楓、大丈夫よ。あたしがついてるから。」
エリカは楓だけに聞こえる、優しい声で言った。
「楓って…ああ、今まであんたがその子供を見てたのかい?
だったらそのまま引き取っておくれ。
あたしにゃそんなのはいらないからね。」
母親はサラリとそう言ってのけた。
その瞬間、楓の瞳から一粒の涙が零れた。
分かっていてもやはり、実の母親にいらないと言われるのは辛いものだった。
「でも、捜索願出されてますよね?」
エリカは震える楓の手を握り、言った。